あなただけを愛したい
「そんなんじゃなくて……」



どうしよう。


蓮くんになら言っちゃってもいいかな。


大きく息を吸って、ゆっくり吐き出してから口を開いた。



「……最初はね、“子供は間違いなく航の子だ”って訴えてきたの」


「ん」


「それが事実でも、もう何年も前のことだし、あたしにそんなこと言われても……って感じだったんだけど」



そこまで言って、言葉に詰まった。


先の言葉が出てこなくなった。



「柑那ちゃん?他にも何か言われた?」



あたしがずっと何も言わないからか、蓮くんが心配そうにあたしの顔を覗き込んできた。


そのまま視線をそらしてしまったあたしを見て、蓮くんがまた口を開く。



「一つ聞いてもいいかな?」


「何?」


「柑那ちゃんはさ、まだ、兄貴のことが好き?」



突然すぎる言葉に、正直に言っていいものかと迷ってしまう。



「……うん」



でも結局、自分の気持ちには嘘をつけなくて……


というより、航に別れを告げたことを後悔しているからか、素直に言えた。
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