あなただけを愛したい
「確かに茜さんに言われたことで、別れを決心したんだけど……。でもね、あの時のあたしは、それが航のためになるって思ってた」


「“あの時の”ってことは、今はどう思ってんの?」



今……


そりゃあ……



「子供がどうとか以前に、凄く後悔してる」


「そっか」



ちょうどそのとき、お料理が運ばれてきて、それを口にし始めた。



「安心した」


「えっ」



蓮くんの予想もしていなかった言葉に、口に運んでいた箸を休め、思わず顔をあげた。


その時の蓮くんの表情は、やさしく微笑んでいて……


なんだかわからない安心感が、あたしの中にすーっと入ってきた。



「正直、手遅れだと思ってた」


「手遅れ?」


「つか、やっぱり、手遅れだったのかな?」


「えっ」



蓮くんが、何のことを言っているのかわからなくて、首をかしげた。
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