あなただけを愛したい
「……君、竜一くんって言ったっけ?」


「そうだけど?……何?」



蓮くんの言葉に不機嫌そうにそう応えた竜一は、蓮くんのことを普段の二割増しくらいで睨んでいて……


でも蓮くんは、そんな竜一に対しても、さっきまでのやさしい笑みを浮かべている。


暴走族の頭をしていた人が身近にいたんだから、これくらいで怯んだりはしないよね。



「今、猛アタック中ってとこ?」


「は?」



蓮くんの言葉に、竜一は眉間に皺を深く寄せた。



「確かに、今がチャンスだもんな」


「……」


「でも、柑那ちゃんの気持ちは、兄貴にあるんだろ?」


「……だから、何?アイツには子供がいるんだろうが。柑那のことを放っといて、楽しそうに親子で過ごしてたじゃねーかっ!」



……そうなんだ。


いくら、あたしが想っていても、航にその気がなかったら、この想いはまったく無意味なものなんだ。
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