あなただけを愛したい
勝手に別れを切り出したくせに、戻りたくなったからって、航のことを待っていてもいいのかな。


都合よすぎない?



「柑那ちゃん?」



蓮くんが心配そうにあたしの顔を覗き込んでくる。



「待つ気はない?」


「ほんとは、……待ちたいけど」


「“けど”何?」



蓮くんがやさしく聞いてくる。


だからつい、本音が出た。



「そんな、我儘を言ってもいいの?」


「我儘?」


「だって、自分から離れたくせに……やっぱり航の傍にいたいからって、そんな勝手なこと……」



俯きながら、ボソボソと言う。


でも……



「柑那ちゃん、それは我儘とは言わないよ」


「えっ」



思わず顔をあげると、変わらずにやさしく微笑んでいる蓮くんがいて……
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