あなただけを愛したい
「その日は無理だから」


「何で?」


「予定があるの」



いまだ視線を下げながら、曲を追う。



「予定?咲季ちゃんらとか?」



視線を下げたまま、首を横に振る。



「おまえ、まさか……」



勘の鋭い竜一は、気付いたのかもしれない。


ゆっくりと顔をあげて、竜一の視線に合わせた。



「ヨリを戻したのか?」


「違うよ」


「……もしかしてさ、“予定がある”んじゃなくて、“予定を空けときたい”だけなんじゃねぇの?」


「……」



ちょっと違うけど……


でもそれも間違いではない。


やっぱり鋭いな。



「あれから、連絡ねぇの?」



顔を覗き込みながら聞いてくる。



「それ、答えなきゃなんない?」



またうるさそうだから、あまりその話には触れたくない。
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