あなただけを愛したい
「いいヤツだね、竜一は」



心底そう思う。


一度は本気で好きになった人。


好きで好きで仕方なかった人。



「“いいヤツ”か。……複雑だな」



竜一は呟くようにそう言って、苦笑する。



「あたし、竜一のことはほんとに好きだったし、一緒に過ごした二年間は、凄く楽しくて幸せだった」



別れを告げられた時、別れて間もない頃は、毎日泣いて喚いてすがって……


凄く辛かった。


でも今は、竜一のことを好きになってよかったって、心からそう思う。



「竜一、ありがとう」


「ん、俺も、おまえを好きになってよかったよ。ありがとな」



そう言った竜一の目には、涙が光っていた。


それに気づかないフリをして、微笑みながら首を縦に振った。
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