あなただけを愛したい
この日、家に帰ってからすぐにシャワーを浴びた。


髪を乾かし、緩くアップにして、お気に入りのワンピースに着替える。


メイクもいつもより念入りに……



「……」



鏡の中の自分を見つめていると、どこか泣きそうな表情をしていることに気付く。



ダメだ……


どれだけ着飾っていても、こんな表情をしていたら、うまくいくものもダメになってしまう。



「はぁ」



小さく息を吐いてから、笑顔を作る。



「……やっぱり、ダメだ」



こんなんじゃ、航は戻って来ないよ。


今度は大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。


そして、両手で両頬を挟むようにして、パンパンッと叩いた。



「……痛い」



思いきり叩きすぎて、目尻に涙が浮かんだ。
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