あなただけを愛したい
この大きな胸も、逞しい腕も、仄かに届く香りも


すべて、航のもの。


目の前に、愛しい人がいるってちゃんと感じられる。


でもやっぱり顔を見ないと、安心できない。


大きな胸に手を添えて、そーっと押して離れる。



「柑那?」



そのまま見上げると……


そこにいるのは間違いなく……



「航」



たった二ヶ月半離れていただけなのに、ずっと会っていなかったように、懐かしく感じる。


大好きな航を見上げていると、さらに涙が止まらなくなった。



「相変わらず泣き虫だな、柑那は」


「…うぅ……」



違うと言いたいけれど、涙が止まらなくて……


やっぱりあたしは、航の言うように泣き虫なのかもしれない。


そんなあたしを、航はやさしく見つめてくれている。


そんな視線に、またどきどきと心臓が音をたて始めた。
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