あなただけを愛したい
航の腕時計の針は、もう八時を指していた。


そりゃあ、お腹がすくはずだよ。


そのまま二人で立ち上がって、繋いだ手の指を絡めながら歩く。


でも、それだけじゃ足りなくて、航の方へ少し体を寄せて……頭を傾けて腕に乗せた。



「柑那?」



あたしの行動に、航が足を止めて顔を覗き込んでくる。



「……好き」



つい、想いを口にしていた。



「……」


「航?」



しばらく固まっていたように見えた航は、突然体を起こして自分の頭をガシガシとかきはじめた。



「だから……やべぇって」


「何が?」


「ほんとに、襲っていい?」



そう言った航は、絡めた手をグイッと引いて、あたしを胸の中におさめた。
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