あなただけを愛したい
大切なもの
.

〈航side〉



『あたし、あなたの子を産んだのっ!』



一瞬、頭の中が真っ白になった。


何言ってんだよ、コイツ。


と思いながら、もしかしたらそれが真実なのかもしれない……と考えている自分もいた。


だけど今は、そんなこと後回しだ。


柑那の様子が気になった。


俺の子を生んだと宣言されて、いい気はしないはずだ。


そして俺の目に映った姿……


確かに顔を歪めていた。



歪めていたはずなのに、口から出た言葉は



『ちゃんと話した方がいいよ』



俺が蒔いたかもしれない種のせいだってわかってる。


でもこの言葉でひどく傷つく俺がいた。


柑那は俺の傍にいるって……


俺から離れるわけがねぇって……


たかをくくっていた。


あまりの衝撃に、『柑那っ!』と呼ぶのが精一杯で、あとを追うことができなかった。
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