あなただけを愛したい
結局どっちも譲らないまま、茜は帰っていった。


途端に、顔を歪めながら走っていった、愛しい背中を思い出した。


すぐに電話を掛けたけれど、出ない。


そのあと、何度掛けても出なくて、とりあえずメールを打つ。



ちゃんと家に帰れたか?


アイツとは何もないから


話がしたいから電話してほしい



こんなありきたりなことしか書けない自分が、腹立たしくて、情けねぇ。



翌朝起きてから、もう一度電話を掛けてみたけれど、やっぱり出なかった。


柑那は傷付いていないかとか、柑那は泣いていないかとか……


すっげぇ気になって、すぐにでも会いに行きたいのに、今日は練習試合だからそれができない。



結局その日の帰りに柑那の家へ寄ったけれど、『今日は帰らない』と言われた。


薄々感じていたけれど、俺はきっと避けられてる。


携帯は電源を落としているらしく、無機質な音声しか流れてこない。


メールを送ったところで、柑那はそれを見てくれるのかもわからねぇ。
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