あなただけを愛したい
アパートへ帰ると、部屋の前にはまた茜がいた。



「あたし、航が一緒になるって言うまで、毎日ここへ通うから」



なんてふざけたことを言う。


もう、勘弁してくれ。


養育費でもなんでもくれてやるから、俺の前に姿を現すな!


そう言えたら、どんなに楽なんだろう。


言えない俺は、やっぱり柑那の傍にいる資格すらないんだろうか。


ようやく追い返して、部屋の中に入ると、嫌でもこの目に飛び込んでくる。


柑那のために揃えた……


食器に、歯ブラシに、クッション、スリッパ……


寝室には、柑那用の引き出しまである。


もう、ここへ来ることはないのか?


そんなの、俺が耐えらんねぇ。



『航が一緒になるって言うまで、毎日ここに通うから』



ふざけんじゃねぇぞ。


そりゃ、俺が蒔いた種かもしんねぇ。


でも何も言わずに勝手に産んだのはおまえだろ!



「くそッ―…」



気付いたら、その辺にあるものを、すべて蹴り飛ばしていた。
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