あなただけを愛したい
でも、これに対して柑那は何も言わず、ずっと黙っていた柑那がようやく口にした内容に、俺は愕然とした。


茜が、柑那のもとへ行っただと!?


そして柑那は、辛そうに顔を歪めながら「航の子供なんでしょ?」と訴えてくる。


それを見て……


俺がこんな表情をさせているんだと思うと、すっげぇ胸が痛くなった。


でも、茜と一緒になる気はないことと、柑那と別れるつもりもないということを、はっきりと柑那に伝えた。


でも――


柑那は、そんな応えを望んでいたわけじゃなかった。


茜の子供が、俺の子かどうかをちゃんと聞きたかったようで……


何も言えなかった。



逃げてるってわかっていても、つい顔を背けてしまった。


しばらく黙っている俺をよそに、柑那は膝の上に置かれていた小さな握りこぶしに、ぎゅっと力が入ったと思ったら、消え入りそうなほどの小さな声で、別れを口にした。
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