あなただけを愛したい
わけがわからなかった。


こんなに簡単に別れを告げられるなんて、思ってもみなかった。


いや、でも柑那にとっては、簡単なんかじゃないんだ。


目の前でポロポロと涙を流す柑那を見て、そう感じた。


きっと、心に深い傷ができているんだ。


俺のせいで柑那はこんなにも傷付いているんだ。


俺は何をやってんだよ。


そうは思いながらも、俺の気持ちは一つしかないってことを伝えることしかできなかった。



「俺は別れるつもりはない」



でも――


柑那は涙をぽろぽろとこぼしながら、痛々しいほどの悲しい笑顔を見せて……



「今まで、ありがとう。あたし、航といられて幸せだった」


「航、バイバイ」



そう言って、玄関から出ていってしまった。


何度呼んでも振り返らない。


追いかけても、やっぱり振り返らない。




でも俺は……


手を離したくねぇよっ――…




外へ出て、柑那を乗せた車が走り去っていくのを、俺はただ、呆然と眺めていた。
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