あなただけを愛したい
「亜衣ちゃん、出かけられる?やめとく?」


「行く!」



“やめとく?”なんて言うから、つい本音が出た。



「あはは、そういう亜衣ちゃん、凄くいいよ」



先生はそう言って、やさしく笑った。


先生のことを、二年半も見てるのに……


こんな表情、見たことない。


愛しいものを見る……、そんな表情。


どうしよう……


涙が出そう。



「ちょっと遠出していい?」


「はい」



そう言うと、先生は車を走らせた。


ぼーっとしながら、窓から、流れる景色をずっと眺めていたら……



「この間のって……」



低いけれどやさしい声が耳に届いた。


だけど突然話し掛けられて、心が何の準備もしていなかったから、勢い良く先生の方を振り返ってしまった。



「あはは、亜衣ちゃんって、時々予想外の動きするから、おもしれぇ」



あ、笑われた。
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