あなただけを愛したい
彼氏?


あたしはいないけど……


お姉ちゃんは、いる。


なんて答えるべき?



「亜衣ちゃん?」



あたしは、亜衣じゃない。


どうしよう……



「彼氏がいないから、合コン行ったんじゃねぇの?」


「……」



信号待ちで停まった時、先生は体ごとこっちを向いて、真剣な眼差しを向けながら口を開く。



「俺と付き合ってくんない?」



思わず、先生の顔をジッと見つめ返した。


真剣な中にも、凄くやさしい表情。


あたしは土原亜衣じゃない。


土原柑那だもん。


だから断らなきゃ……


でも……


何で言葉が出てこないの?






答えは、わかってる。


ここで断ったら、もうメールも電話もこない。


あたしはどんな形でも……


先生とつながっていたいんだ。


お姉ちゃんの身代わりでもいい……


傍にいたい……って。



最低だけど、そう思ってしまった。
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