あなただけを愛したい
「寒い?」


「少し」



あたしがそう言うと、先生は後部座席から何かを取り出して、手渡してきた。


広げてみると、先生のシャツ。



「それ、羽織ってな」


「ありがとうございます」



どきどきしながら袖に腕を通すと、先生に包まれてるみたいに、心も体も温かくなった。



「大きい」


「はは、でも少しは寒さを凌げるだろ?」


「はい」



少しどころか……


凄くあったかいよ。



そのまま砂浜に下りて、波打ち際を歩いた。


砂に足がとられて歩きにくい。


だから、ぎこちなく歩いていたら



「ほら」



そう言って、一歩前を歩く先生が手を差し出してきた。


これって……


手を繋ぐってことだよね?
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