あなただけを愛したい
「亜衣ちゃん?」



先生が顔を覗き込もうとするから、思いきり顔をそらしてしまった。


どうしよう……


凄く感じの悪いことをしてしまった。



「もしかして、……好きなヤツとか、忘れられないヤツとか、そういう男がいるの?」


「えっ」


「いつも、どこか悲しげな表情をしてるから」



それは……



「ゆっくりでいいや」


「え?」


「ゆっくりでいいから、俺のことを見ていってほしいな」


「……」



もう、……見てるのに。


こんなに好きなのに……



「寒くなってきたな。車に戻ろうか?」


「……はい」



また手を繋ぎながら砂浜を歩いて、車まで戻った。




そのあとは、一緒に夕食を食べて家の近くのコンビニまで送ってもらったけれど……


先生の前で、柑那でいられないことが凄く辛い。


そんなことばかり考えていたからか、ずっと、うわの空だった。
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