あなただけを愛したい
「最近、放課後教室に残ってねぇじゃん」


「別にいいでしょ」



教室の窓から先生を見なくなって、気付けばもう三週間近く経った。



「なに?失恋でもしたの?」


「……」



なんか……


ムカつく。



先生に“付き合って”って言われて、つい頷いちゃったけど……


あれはあたしにじゃない。


あたしは、確かに失恋したんだ。


だから……


当たってるだけに、心がモヤモヤする。



「ほんとに失恋?」


「田中くんには関係ない」


「関係あるよ。俺、土原のことが好きだって言ったじゃん。失恋したら、俺にもチャンス有りってことだろ?」


「ない」


「は?」



あるわけないし。



「それ、ひどくねぇ?」


「しょうがないじゃん。あたしにその気がないんだから」



冷たいかなって思ったけど、その気もないのに期待させたくはない。



「脈なしってこと?」


「うん」



はっきり言いすぎかな。


でも……


気持ちがないんだもん。



「……」



それからの田中くんは、一言も言葉を発しなかった。
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