愛★ヴォイス
「さっき気付いて電話したんですけど、担当の人もう帰ったって……」
半べそ気味の部下に変わって、受話器を取る。
「誰が残ってたの、その電話に出た人は?」
「確か、中山さん……」
「第3の中山君か、彼なら分かるかな……あ、お疲れさまです、経理の真下です。確認したいことがあって……ええ、差し戻ししてた請求書のデータなんですけど――」
こうして仕事の波に飲まれてゆく。
次に時計を見ると、既に9時を回っていた。
桐原さんからメールが来ていたことを思い出して携帯を開くと、順当に未読数が増えていた。
どれも“体調大丈夫ですか?”“仕事何時に終わりますか?”“返信待ってます”といった内容だ。
一息ついて携帯を閉じる。
相変わらず彼の真意が分からない。
でもそれを問いただす勇気もない。
出来れば、この場所から動きたくなかった。
私は彼のファンで、少しだけ彼の直接の知り合いで。
彼に嫌われたくなければ、彼を嫌いにもなりたくなかった。
ここから一歩でも動けば、そのどちらかが待ち受けているかもしれない。
ならいっそのこと動かなければいい。
このままフェイドアウトしていけば――。
「すごい背、高かったねぇ」
「本当、モデルさんかな」
半べそ気味の部下に変わって、受話器を取る。
「誰が残ってたの、その電話に出た人は?」
「確か、中山さん……」
「第3の中山君か、彼なら分かるかな……あ、お疲れさまです、経理の真下です。確認したいことがあって……ええ、差し戻ししてた請求書のデータなんですけど――」
こうして仕事の波に飲まれてゆく。
次に時計を見ると、既に9時を回っていた。
桐原さんからメールが来ていたことを思い出して携帯を開くと、順当に未読数が増えていた。
どれも“体調大丈夫ですか?”“仕事何時に終わりますか?”“返信待ってます”といった内容だ。
一息ついて携帯を閉じる。
相変わらず彼の真意が分からない。
でもそれを問いただす勇気もない。
出来れば、この場所から動きたくなかった。
私は彼のファンで、少しだけ彼の直接の知り合いで。
彼に嫌われたくなければ、彼を嫌いにもなりたくなかった。
ここから一歩でも動けば、そのどちらかが待ち受けているかもしれない。
ならいっそのこと動かなければいい。
このままフェイドアウトしていけば――。
「すごい背、高かったねぇ」
「本当、モデルさんかな」