愛★ヴォイス
【夢】ト【現実】
【桐原周也】
ケータイのアドレス帳に新しく加わったその文字を眺めるだけで顔がにやけてしまう。
「あんたの好みがああいう男だったとはねぇ」
合コン明けの翌週、開口一番、野中部長はこうつぶやいた。
「どおりでこれまでいくらセッティングしてもなびかなかったわけよね。ーーもう、そういう大切なことは早く言いなさいよ、貧乏男子が好きなんて」
「いえ、あの……決してそういう訳ではーー」
「それで?何、もうあんたたち付き合ってんの?」
「まさか!」
連絡先こそ交換したものの、私から連絡もしていないし、もちろん彼からも音沙汰なしである。
あの雰囲気だとおそらく私から連絡しない限り、向こうからチケットを売りにくることはないだろう。
「桐原さんの舞台チケットを買わせてもらうだけですから!」
「なるほどね~。ああいう男子にはそういう角度から攻めるのが効果的なのか。確かにね~、彼、今は色恋沙汰なんてまったく興味ありませんッってオーラ出しまくってたしね……」
ま・頑張りなさいよと、ぽんと肩を叩いて部長は席に戻っていった。
複雑に勘違いされているような気がしなくもないが、私が桐原周也との縁を切りたくないことに変わりはない。
これでしばらくは合コンに誘われることもないだろう。
その日の昼休みの内に、私は無難な内容で彼にメールを打った。
【先日は連絡先を交換して下さってありがとうございました。つきましては次回公演のチケットを購入させていただきたくメール致しました。こちらはしばらく平日18:00以降、土日共に動けます。桐原さんのご都合はいかがでしょうか?】
(送信、っと)
ケータイのアドレス帳に新しく加わったその文字を眺めるだけで顔がにやけてしまう。
「あんたの好みがああいう男だったとはねぇ」
合コン明けの翌週、開口一番、野中部長はこうつぶやいた。
「どおりでこれまでいくらセッティングしてもなびかなかったわけよね。ーーもう、そういう大切なことは早く言いなさいよ、貧乏男子が好きなんて」
「いえ、あの……決してそういう訳ではーー」
「それで?何、もうあんたたち付き合ってんの?」
「まさか!」
連絡先こそ交換したものの、私から連絡もしていないし、もちろん彼からも音沙汰なしである。
あの雰囲気だとおそらく私から連絡しない限り、向こうからチケットを売りにくることはないだろう。
「桐原さんの舞台チケットを買わせてもらうだけですから!」
「なるほどね~。ああいう男子にはそういう角度から攻めるのが効果的なのか。確かにね~、彼、今は色恋沙汰なんてまったく興味ありませんッってオーラ出しまくってたしね……」
ま・頑張りなさいよと、ぽんと肩を叩いて部長は席に戻っていった。
複雑に勘違いされているような気がしなくもないが、私が桐原周也との縁を切りたくないことに変わりはない。
これでしばらくは合コンに誘われることもないだろう。
その日の昼休みの内に、私は無難な内容で彼にメールを打った。
【先日は連絡先を交換して下さってありがとうございました。つきましては次回公演のチケットを購入させていただきたくメール致しました。こちらはしばらく平日18:00以降、土日共に動けます。桐原さんのご都合はいかがでしょうか?】
(送信、っと)