愛★ヴォイス
「え?それってーー」


企業PVのナレ録れ――それはつまり“企業が作成する自社プロモーション映像のナレーション”の略。


これでも一応広告業界に身を置いているので、さすがにその言葉にはピンときた。


(それって結構大きい仕事なんじゃーー?)


口を開きかけた私の目の前を、すかさず、ぴしっと立てられた桐原さんの手のひらが遮る。


「先に断っておきますが、今真下さんが考えたような企業PVの仕事とはまったく違います」

「え?」

「いただいているお仕事のことなんで、あまり言うつもりはありませんが……ま・ピンキリってヤツです」

「はぁ……」


男らしく数口でハンバーガーを口に収める桐原さんを、今度は私がこわごわ見遣る番だった。


「あとは洋画の吹き替え」

「吹き替え?!」

思わず身を乗り出しそうになる私を、再び桐原さんの片手が制する。


「海外ドラマのレンタル用DVDの…です。最近流行ってるんで吹き替えの仕事は多くて――まぁ、1話で殺される役とかですけど」

「……はぁ」


声フェチを自称しているだけに、声優業界には多少詳しいつもりでいたが、ドラマCDやラジオしかチェックしていない自分は、まだまだなんだと思い知らされる。
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