愛★ヴォイス
夏休み前までは、ちょくちょく送られてきていた仕事報告メールも、気が付けばぷっつりと途絶えていた。


(あれからあんまり仕事増えてないのかな……それとも)



それとも。



やはりあのファストフード店での私の物言いに、気に障るものがあったのかもしれない。

そもそも、数えるほどしか顔を合わせていない私に、いちいち決まった仕事を知らせる義務などないのだ。

おまけに大手広告代理店に勤めているとはいえ、経理部主任など、彼にとってつき合うメリットすらない。


口実がなければあっさりと切れるーー彼との縁は、クモの糸ほどに細いものだったのだと、改めて思い知った。


声優・桐原周也のファン。


私の立ち位置は、そこからまったく変わっていない。

スピーカーからいつ流れるともしれない彼の声を待ち、受け取るだけ。


意味もなく、ケータイの電話帳を開く。

ディスプレイで光る彼の連絡先は、点の集合体にすぎなかった。





気が付けば、9月も終わりに近づいていたある日の終業間際。

「真下、今日ちょっとつき合いなさい」

エレベーターホールで、野中部長に声を掛けられた。

聞けば、合コンでもなければ部内の飲み会でもないという。
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