愛★ヴォイス
「いえ、おかげで桐原のヤツ、やっと声優の仕事に本気で向き合う覚悟が出来たみたいで」
「――え?」
「友人としてどうしても真下さんにお礼がしたかったんです。今日はごちそうしますよ」
ぱっと顔を上げると、バックミラーの三田君と目が合った。
「あいつ、ここ一年くらい、マネージャーから『もっと大きな役のオーディションを狙ってみないか』って言われてたみたいなんですよ。
でもあいつが目指してるのは舞台で……僕は時々相談受けてました」
「……」
「僕は、声優としての才能を認められてるのだから、オーディションを受けるべきだと、何度か奨めたんですけど、あいつはなかなか首を縦に振らなくて。
でも、真下さんの一言が、相当効いたみたいですね」
「!そんな――」
言いかけたところで、タクシーが止まった。
三田君のエスコートならば、高級ホテルのレストランもありかもと、半ば期待をしていたのだが――
【居酒屋へいらっしゃい】
目の前に煌々と灯る赤提灯に、見事な墨文字が躍っている。
テレビCMでもよく見かける、有名居酒屋チェーンだ。
念のため周囲に目を凝らしてみるが、どこも似たような系列の看板ばかりで、期待していた高級感は微塵も感じられない。
ふと肩を叩かれ振り向くと、先程まで寝ていた人間とは思えない顔の部長がそこに居た。
店に入るよう、黙って顎で促す。
「――え?」
「友人としてどうしても真下さんにお礼がしたかったんです。今日はごちそうしますよ」
ぱっと顔を上げると、バックミラーの三田君と目が合った。
「あいつ、ここ一年くらい、マネージャーから『もっと大きな役のオーディションを狙ってみないか』って言われてたみたいなんですよ。
でもあいつが目指してるのは舞台で……僕は時々相談受けてました」
「……」
「僕は、声優としての才能を認められてるのだから、オーディションを受けるべきだと、何度か奨めたんですけど、あいつはなかなか首を縦に振らなくて。
でも、真下さんの一言が、相当効いたみたいですね」
「!そんな――」
言いかけたところで、タクシーが止まった。
三田君のエスコートならば、高級ホテルのレストランもありかもと、半ば期待をしていたのだが――
【居酒屋へいらっしゃい】
目の前に煌々と灯る赤提灯に、見事な墨文字が躍っている。
テレビCMでもよく見かける、有名居酒屋チェーンだ。
念のため周囲に目を凝らしてみるが、どこも似たような系列の看板ばかりで、期待していた高級感は微塵も感じられない。
ふと肩を叩かれ振り向くと、先程まで寝ていた人間とは思えない顔の部長がそこに居た。
店に入るよう、黙って顎で促す。