愛★ヴォイス
「足首痛めませんでした?」


心配そうに顔をのぞき込まれて、自然とその声が近くなる。


胸の奥がチリチリと灼ける衝動を抑えながら、私は何とかこくこくとうなずき返した。



「おー、桐原。また来たぜ」


タクシーの支払いを終えた三田君が遅れて店に入ってきた。


「三田ッ……おまえ、部長さんに――真下さんまでッ……」


私の名前を言いながら、桐原さんは気まずそうに視線を逸らした。


それはそうだろう。


私たちが直接会うのは、ファストフード店でのあの一件以来なのだから。




「とりあえず生3つ、と、おすすめサラダと焼き鳥の盛り合わせ」


お通しを運んできた桐原さんに、部長が慣れた調子で注文する。


「へい、らっしゃい!」


店の決まり文句を口にして、桐原さんはカウンターの奥に引っ込んでしまった。


そんな桐原さんの背中をつい見送ってしまった私に、三田君が意地悪く微笑む。
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