愛★ヴォイス
そうして粛々と“大人の”合コンが開始された。
運悪くテーブルの一番奥に収まってしまった私から自己紹介を始める。
「真下紫……です。えー……野中さんと同じ経理部で働いています。よろしくお願いします」
こんな何のアピールもない自己紹介はもちろん私だけ。
男性側も含めて、みんな適度な洒落を交えた高度な自己アピール合戦を繰り広げている。
所在なさげに、手元のメニューリストに目を落として時間をつぶしているとーーふいにその声が飛んできた。
「桐原周也です」
たまらずに顔を上げる。
(……!!)
どうりで見覚えがあるはずだった、あの長身の黒縁メガネ君だ。
「すごく通る声なんですね」
女性側から華やいだ声が上がる。
「こいつ、役者やってるんですよ」
と、すかさず三田君。
「それで店員への声掛け要員でいつもこういった席に呼ばれるんです。だからみなさんは遠慮なく、俺以外の素晴らしい皆さんと、今日は楽しんでいってください」
その声の持ち主は、冗談めかしくにっこりと微笑んでその場を収めた。
どっと笑いが起こる場内。
しかし、私の目は“桐原周也”に釘付けだった。
キリハラ・シュウヤ。
まさか本名で活動してるなんて。
運悪くテーブルの一番奥に収まってしまった私から自己紹介を始める。
「真下紫……です。えー……野中さんと同じ経理部で働いています。よろしくお願いします」
こんな何のアピールもない自己紹介はもちろん私だけ。
男性側も含めて、みんな適度な洒落を交えた高度な自己アピール合戦を繰り広げている。
所在なさげに、手元のメニューリストに目を落として時間をつぶしているとーーふいにその声が飛んできた。
「桐原周也です」
たまらずに顔を上げる。
(……!!)
どうりで見覚えがあるはずだった、あの長身の黒縁メガネ君だ。
「すごく通る声なんですね」
女性側から華やいだ声が上がる。
「こいつ、役者やってるんですよ」
と、すかさず三田君。
「それで店員への声掛け要員でいつもこういった席に呼ばれるんです。だからみなさんは遠慮なく、俺以外の素晴らしい皆さんと、今日は楽しんでいってください」
その声の持ち主は、冗談めかしくにっこりと微笑んでその場を収めた。
どっと笑いが起こる場内。
しかし、私の目は“桐原周也”に釘付けだった。
キリハラ・シュウヤ。
まさか本名で活動してるなんて。