愛★ヴォイス
「それで――ここからはご相談なんですが」


居住まいを正す桐原さんに対し、こちらもつられて背筋を伸ばした。

桐原さんが再びメッセンジャーバッグから何かを取り出す。

今度は書店のロゴが入った紙袋だった。

コミックスと比べるとかなりの大判だが、厚みはなく、雑誌のような形状を思わせた。


手渡されて、中身を取り出そうとすると、慌てて止められた。


「マイナーな雑誌なので、上からのぞき込んでいただくだけで……」

「?」


不思議に思いながらも、言われたとおり、袋の口から中をのぞき込む。


それは私でもわかる有名声優専門雑誌だった。


改めて店内を見回して、桐原さんが中身の取り出しを慌てて止めた理由がわかった。


ここは若者の街・S駅。

この街のカフェでこの雑誌を広げる勇気はない。


タイトルだけ確認して、袋ごと桐原さんに返した。


「この雑誌が何か?」

「実は……」


どうにも歯切れが悪い。


首をかしげて応えを待っていると、コーヒーを一口飲んでやっと打ち明けてくれた。
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