愛★ヴォイス
「その……どうしたらいいと思います?」

「……?何がですか?」

「髪とか、服とか……」

「……はいぃ?」


思わず素っ頓狂な声が飛び出し、慌てて両手で口を塞ぐ。


「こんなこと、真下さんにお伺いするのは筋違いだってこと、ちゃんとわかってるつもりです。でも他に相談できる相手がどうしても思い当たらなくて……マネージャーは“女性の目線を意識しろ”とか言うし……」

「そう言われても――」


私は一人っ子で男兄弟がいるわけでもない。

広告代理店に勤めてはいるが、経理部なのでヘアメイクやスタイリストとの縁も持ち合わせてはいない。


「あの……三田さんは?彼、すごくセンスいいですよね?スーツのブランドもいいところだし……」


これぞ名案!と思って口にしたが、桐原さんはふっと苦々しい笑みを浮かべて、深いため息をついた。


「真下さん……スーツ姿のあいつしか見たことありませんよね?俺が言うのもなんですけど、あいつの私服は相当ヤバいですよ。目がチカチカするような、原色の組み合わせが好きみたいで」

「それは……残念ですね」


ハイセンスで高級志向な部長の顔が頭をよぎり、私は心からそう口にしていた。


「真下さんっ、何かヒントだけでも!お願いしますっ!」


ぱんっと顔の前で両手を合わせた桐原さんが、そっと片目を開けてこちらの様子をうかがっている。
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