愛★ヴォイス
もちろん場の視線が一斉にこちらに集まる。

すぐに三田君が駆け寄ってきた。

「真下さん、顔真っ青ですよ!」

「……あの……外で少し休めばーー」

「おい、桐原!ちょっと真下さんに付き添ってやって」

「わかった」


(ーーえ?え?桐原?)


名前を聴いただけで動揺が増して、思わず膝まで床に突きそうになると、脇からすっと腕が伸びてきて私の肩を支えた。

「大丈夫ですか?」

更に近くなったその声に、もう身体に力を入れることなんて出来ない。


半ば引きずられるようにして、私は店の外に出た。

空調ではない、外の空気が気持ちいい。

私は思いきり深呼吸をした。

「お酒、弱いんですか?」

その心地よい低音ヴォイスが胸を打つ。

台詞じゃない、今の私に向けられた桐原周也の声。

「いっ……いえ、いつもはこんなんじゃないんですけど、なんか今日は……」

「少し行くと公園があるんで、そこで冷たいものでも飲みましょう。歩けます?」

こくこくとうなずくと、眼鏡の奥の瞳がにっこり微笑んだ。
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