愛★ヴォイス
代わりにと、二人は再会を誓うべく、固い握手を交わしていて、その様子がなんだか微笑ましく、遠目に眺めていると
「紫、近所の少年たちを温かく見守るおばさんみたい」
と、背中からばっさりレナに切りつけられた。
相変わらずこの同僚は容赦がない。
柏木姉弟とは、近くの地下鉄の階段前で別れた。
JRの駅に戻るべく、桐原さんと二人、週末の喧噪に包まれた通りを並んで歩き始める。
思いがけず訪れた二人きりというシチュエーションに、どぎまぎと気持ちが落ち着かない。
ファッションショーを終えた桐原さんは、すっかりいつもの埃っぽい格好に戻っていた。
目に入れていたグレーのカラーコンタクトも外し、オレンジ色の頭は多少目立つものの、道行く人を振り向かせるようなオーラは完全にぬぐい去られていた。
しかし、どんな姿であろうとその美声に変わりはない。
何度聴いても慣れるどころか、聴けば聴くほど胸が高なる。
こちらが何か言葉を発すれば、あの響きのある美声が返ってくるのだと思うと、緊張して話しかけることもためらわれた。
私はまだ、買ったレザーブレスも渡せないままでいる。
「真下さんは、H駅からどっち回りですか?」
「紫、近所の少年たちを温かく見守るおばさんみたい」
と、背中からばっさりレナに切りつけられた。
相変わらずこの同僚は容赦がない。
柏木姉弟とは、近くの地下鉄の階段前で別れた。
JRの駅に戻るべく、桐原さんと二人、週末の喧噪に包まれた通りを並んで歩き始める。
思いがけず訪れた二人きりというシチュエーションに、どぎまぎと気持ちが落ち着かない。
ファッションショーを終えた桐原さんは、すっかりいつもの埃っぽい格好に戻っていた。
目に入れていたグレーのカラーコンタクトも外し、オレンジ色の頭は多少目立つものの、道行く人を振り向かせるようなオーラは完全にぬぐい去られていた。
しかし、どんな姿であろうとその美声に変わりはない。
何度聴いても慣れるどころか、聴けば聴くほど胸が高なる。
こちらが何か言葉を発すれば、あの響きのある美声が返ってくるのだと思うと、緊張して話しかけることもためらわれた。
私はまだ、買ったレザーブレスも渡せないままでいる。
「真下さんは、H駅からどっち回りですか?」