愛★ヴォイス
(そんな状況で、赤道周役が高橋悠ではなく、桐原周也だと発表されたら――?)



なんだか嫌な予感がする。


でも私にはどうすることも出来ない。

このまま正式なキャスト発表を待つしかないのだ。


(何が起こっても、私には彼を見守ることしか出来ない……)


その事実が深く胸に突き刺さった。





そんな私の気持ちを知ってか知らずか、数日後に届いた桐原さんの【無事撮影終わりました】というメールは、底抜けに明るいものだった。


私の感じた不安も杞憂に過ぎないのではないかと思わせてくれる。


アイドルっぽいVサインを決めた写真まで添付してあった。

帽子から靴まで黒で統一されたコーディネートの所々にワインレッドの紅色が映え、鮮やかな赤縁のメガネと帽子の端から覗くオレンジ色の髪が、コミカルな印象を与える。


そして


手首には私がプレゼントしたブレスレットが。


(本当に使ってくれたんだ)


くすぐったい気持ちに顔がほころぶ。


ブレスを目立たせるために、シャツの袖が折り返してあるのだが、裏地がストライプになっていて、かなりのお洒落上級者に見える。
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