愛★ヴォイス
一方で


(いい声してるなぁ……)


などと、こんな時でも相手の声の善し悪しを判断している自分が恨めしい。



気を取り直して、おそるおそる背後を振り返る。



見覚えのある寒そうなよれたラインと、ニットキャップからのぞいたオレンジ色の髪――。



「――真下さん……?」


「き、桐原さんっ――?!」


マスクこそしているものの、それは紛れもなく桐原さん本人だった。


見慣れないマスク姿に、私は動揺した。


「……っ!風邪ですかッ?!」

「いえ、これは予防で――」


人差し指でマスクを下げながら応える彼に、私は更ににじり寄った。


「じゃあ、元気ですか?」

「??はい……元気です……よ?」

「――良かったぁ……」


ほっとしたら、思いがけず再びその場にへたり込んでいた。

更に驚いたことに、両目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちてくる。
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