愛★ヴォイス
「うーん……午前中出来るバイトに変えたんです。声の仕事ってほとんど午後から深夜にかけてなんで。そういう意味では、声優の仕事が原因――かな」
いつも飄々としていて、明るい口調の桐原さんにしては、先ほどからどうにも歯切れが悪い物言いをする。
街灯に照らされた横顔には、少し陰りが見えた。
「そんなことより、真下さんはどうしたんです?何か嫌なことあったんじゃないですか?」
くるりと表情を変えながら、桐原さんは私の方に向き直った。
「真下さんの仕事の内容については分かんないですけど、話聞くくらいは出来ますよ」
笑顔でぐいと表情を覗き込まれて、思わず仰け反った。
それと同時に顔がぼんと紅くなったのが判る。
しかしそれでも尚、彼は退くどころかこちらに迫ってくる。
時折、桐原さんはこういう物怖じしないところを見せる。
それを若さと感じるのは、自分が年を取った所為だろうか。
「し・仕事は、確かに今忙しいです。年末進行と年度末進行が重なってるところがあって――毎年のことなんで、もう慣れましたけど」
そうだ。
毎年この時期から決算月までのおそよ半年は、仕事に忙殺さ
れ、ほとんど家と会社を往復するだけの日々になる。
それでも、私には大好きな“声”があった。
いつも飄々としていて、明るい口調の桐原さんにしては、先ほどからどうにも歯切れが悪い物言いをする。
街灯に照らされた横顔には、少し陰りが見えた。
「そんなことより、真下さんはどうしたんです?何か嫌なことあったんじゃないですか?」
くるりと表情を変えながら、桐原さんは私の方に向き直った。
「真下さんの仕事の内容については分かんないですけど、話聞くくらいは出来ますよ」
笑顔でぐいと表情を覗き込まれて、思わず仰け反った。
それと同時に顔がぼんと紅くなったのが判る。
しかしそれでも尚、彼は退くどころかこちらに迫ってくる。
時折、桐原さんはこういう物怖じしないところを見せる。
それを若さと感じるのは、自分が年を取った所為だろうか。
「し・仕事は、確かに今忙しいです。年末進行と年度末進行が重なってるところがあって――毎年のことなんで、もう慣れましたけど」
そうだ。
毎年この時期から決算月までのおそよ半年は、仕事に忙殺さ
れ、ほとんど家と会社を往復するだけの日々になる。
それでも、私には大好きな“声”があった。