愛★ヴォイス
溜め録りしたアニメと宅配ボックスに届けられたドラマCD。


どんなに疲れていても、何かしらの再生ボタンを押すことだけは忘れなかった。


声優さんの声だけを頼りに、気が狂わんばかりの繁忙期を常に乗り越えてきた。


特に桐原さんの声に出会ってからは、いつどんな端役で声が飛んでくるのか分からなかったので、可能性がありそうな作品はガヤまで聴き漏らさない勢いだった。


CDを聴く前に、ブックレットに印刷された“桐原周也”の文字を見つけたときは舞い上がってしまい、逆に眠れなくなってしまったほどだ。


疲れているはずなのに、ヘッドフォンから伝わる声に胸は高鳴る一方で――。




〈――ドクン〉



こんな素敵な声の持ち主なら、どんな人でも構わないと思っていた。



〈――ドクン〉



実際には、私より年下で。


何よりも、演じることにひたむきで。





突然、彼が立ち上がる気配を感じて、ふと我に返った。
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