愛★ヴォイス
堅苦しい食事の席など、彼は不慣れで落ち着かないかもとは思ったが、ここは年上としてドレスコードもある有名な高級和牛ステーキレストランを抑えた。


最初で最後の思い出になるかもしれないのだから、この位奮発させてくれたっていい。



案の定、待ち合わせに現れた桐原さんは慣れないスーツにぎくしゃくとした面もちで現れた。

思わずこぼれた笑みに、彼も笑顔で応えてくれる。



――そう、祝いの席と銘打った食事会は和やかに進んでいた……はずだ。



しかし。





(――――!!!!)



気が付くと、それは見慣れた寝室の天井だった。


(――夢……?)


まさかと思って辺りを見回そうとするが、頭が鉛のように重く、おまけになぐられたようにじんじんと痛んで動かせない。

それでも必死にベッドの隣を確認し、自分の服を確かめた。


隣に誰か寝ていた形跡はなく、食事会の為に奮発したドレススーツにも、もちろん下着にも乱れはない。



最悪の事故が起こった訳ではなさそうだ。

痛みに揺れる頭を何とか奮い立たせて、昨夜の記憶をたぐり寄せる。



「乾杯」


食前酒に頼んだシャンパンで乾杯したあと、コースに合わせたワインを堪能しながら食事と会話を楽しんだ。


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