愛★ヴォイス
「いった・たた……」


自分の発した声ですら頭に響く。


それでも喉の乾きを潤したい一心で、壁を伝ってダイニングキッチンにたどり着いた。




しかしそこで私は信じられない光景を目にする。




慣れ親しんだ一人用のダイニングテーブルに置かれたミネラルウォーターと胃薬。そして――



“鍵はポストに入れておきます  桐原”



針金を折ったような字のメモ。



(桐原さんがこの家に入った――???)


頭痛も吐き気も忘れて、私はその場に崩れ落ちた。

改めて自分の服を確かめる。

ストッキングすら脱げてはいない。


今度は改めて寝室を見遣る。


ここに来るまでに寝室のドアを開けた記憶はあるから、ドアは閉まっていたことになる。

彼がダイニングまで入ってきたことは確かだが、寝室まで見たかどうかは定かと言えない。


(……あの部屋を見られた……?)


慌てて寝室に戻る。


サイト作りの為に広げられた桐原さんの資料、CD、いかついヘッドフォンに、BLPCゲーム――。



“鍵はポストに入れておきます”



残されたメモからは何も読みとれない。


(私は何かしでかしたの?!ぎりぎりセーフだったの??)
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