愛★ヴォイス
どれだけ考えても、日本酒をあおったあの時から自分の寝室で目覚めるまでの記憶がまったくないという事実しか浮かんでこない。


とりあえず、テーブルの上にあった胃薬をありがたく頂戴して大量の水で流し込み、落ち着きを取り戻したところでシャワーを浴びた。

念のため裸の自分を鏡に映してみたものの、下着の跡しか見当たらない。


シャワーを浴びながら、こちらから昨晩のことについて桐原さんにメールしようかどうかと悩んでいたが、そんな悩みは杞憂に終わった。


先に桐原さんからメールが届いていたのだ。


“昨晩はあんな高級レストランでフルコースをご馳走いただきありがとうござました!あの本当にとろける和牛の味は一生忘れませんっ!だいぶ酔われていたようですが大丈夫ですか?心配なので出来れば返信下さい。こちらからもまた近いうちに連絡させていただきます。では。”



当たり障りのない彼からのメールの内容に、ほっと胸をなで下ろす。

この様子だと、彼があの散々たる趣味にまみれた寝室を見たことはなさそうだ。



そう思ってこちらも無難なメールの返信を打っていると、再び桐原さんからメールが届いた。


不思議に思ってメールを開いてみるが、件名も本文もなく添付ファイルが付いているだけ。


(……?)


おそるおそる添付ファイルを開いてみると――
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