君に伝える。

いきなり怒鳴らないでよ。
彩菜の大切な鼓膜が破れるじゃない。

「つまんねぇ、付き合ってもねぇ男とイチャついてたくせに。
 それが元カレに対する態度かよ?
 キスの1つや2つ減るもんじゃねぇだろ」

ここまでは我慢できた。
許せないのは、このセリフだ。

「このインランが」
「はぁ?何よ、彩菜がインラン?ふざけn」
「黙れよ」

低い声で睨みながら言われる。

怖かった。

さっきまでは、怖いけれど頑張れた。
遊喜だって分かってくれる。
こんなことすぐやめてくれる。

そう思えたから。

でも、脚を触る手が上へとあがるたび、
恐怖度も上がっていく。

口を手で塞がれ、
彩菜の首筋に顔をうずめる。

「…った!」

鋭い痛み。
ちくしょー、こいつ噛みやがった。
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