君に伝える。









10分後―――――――――――


「もう、大丈夫。ありがと」

10分間、泣き続ける喜田の髪を撫でていた。
俺の体操服が、涙で濡れるのを感じながら。

てゆーか、泣きすぎだろ。

俺の体操服ビチョビチョだし。

「ゴメン鼻水つけたかも」
「えぇ!?」
「うっそー。鼻水なんか出しませんー」

って言いながら鼻をすする。
実はちょっとだけ鼻水出てるけど。

「ずっと我慢してたんだ、泣くの」
「なんとなく、そんな気がしてた」
「バレてたんだ?
 彩菜ね、普段こんなじゃん?
 負けず嫌いだし、気が強い。
 
だから、なんか弱いトコ見せるの嫌だったの」

お前はそう思ってるかもしれないけど、
きっと近くにいるヤツは気付いてる。

佐藤とか、俺もだし、たぶん辰巳も。

鈍感すぎるんだよ。

いい加減気付け。
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