泣き恋心


「ホントに大丈夫なんか?俺からしたら大丈夫そうに見えないんだけど…」
「紅はなんでもお見通しなんだね!式が終わってから話すよ!」
「りょーかい」

そして紅はまた前を向いた
ちえりもボーッとしてるみたいだった。
近くにいた水口が心配そうに話しかけていた姿を見たから。
私はボーッとしていたからか式の進み用が早く感じた。
だからあっという間に終わった。
式が終わり私たちは教室に戻る。
戻ってケータイを見てみるとメールが来ていた。
見てみると叶矢だった。

“少し長引くからいつものところにいろよ”

叶矢の言う“いつものところ”というのは屋上の事。
いつもお昼は屋上だったからそこが私たちの場所だった。
はぁ…笑顔で…笑顔で。

「叶矢…遅れるのか…」

独り言で言ってみた私。
まぁ仕方のないことだよね…卒業式だし。

「叶矢くん…遅れるって??涙梨は遅れるって言ってきたんだけど…」

涙梨もか…そりゃぁそうだよね…。

「うん…先にいつもの場所行ってようか」
「そうだね…」

そして私たちは先に屋上に行っておくことにした。
着くとちえりは良い笑顔をしていた。

「そうしたの?ちえり…」
「ん?私たちの思い出の場所だなぁって思って!」
「そっか!いい思い出だよね…これも…」

休み時間はいつもここで会っていた私たち。
サボったときも…。
これは紅が合鍵として屋上のカギをくれたおかげかな…。
紅には感謝しないとね!
叶矢には4人の旅行前に誤解させちゃった場所。
紅にアドバイスをもらっていたところをちょうど見られていた。
屋上から叶矢たちの教室ははっきりと見える。

ちえりとボーッと思い出に浸っていると

「待たせたな…悪りぃ」
「ちえりごめんな?」

やっときた。
笑顔で“卒業おめでとう”って言ってあげなきゃね。

「きょ…」

グイッ。
え?
叶矢と涙梨におめでとうと言おうとした瞬間だった。
ちえりが私の裾をつかんできた。
ちえりが何でつかんできたのかはすぐにわかった。
だって…私と同じだったから…。

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