泣き恋心


紅side

俺は楼栗をデートに誘った。楼栗はすごく喜んでくれた。
提案してみてよかった。
駅まで話しながら行くと楼栗はトイレに行ってしまった。

「切符でも買っとくか…」

そうして俺は楼栗の分の切符も買い、しばらくそこで待っていた。

「あれ?…紅?」
「ん?…あぁ…」

名前を呼ばれたからその方向を向くと前カノ、真美が立っていた。

「ここで何してんの?友達待ち?」
「いや…別に…てか、お前に関係ねぇーだろ…」
「まぁ…それもそうだね…私ね…今でも紅のこと好きなんだよ?」
「はぁ?」
「はぁ?…ってひどいなぁー!だから私は今も紅のことが好きだって言ってんの!」
「そんなこと言われても困るし。だって彼女いるからさ…」
「あの楼栗って子と付き合えたんだ?」
「あぁ…だから無理だ。」
「じゃぁその子と別れたら私と付き合ってくれるのー?」
「何言ってんだよ!別れねーし。別れたとしてもお前とは付き合わない」
「あっそ。言ってみただけじゃない…じゃーね」

何なんだ…アイツは。
この時の俺は真美がこれから楼栗にとんでもないことをしでかすなんて思ってもなかった。
その時だ。

「…ねぇ紅?今の女の子誰?」

えっ!?見てたのか…。
正直に話すしかないかな…。

「元カノ…。」
「そっか…元カノと何してたの?」
「それは…たまたまあっちが俺に気づいて…」
「言い訳なんか聞きたくないから…」

そう言い残して楼栗は走って行ってしまった…。
俺は二枚の切符をただ握りしめることしかできなくて、追いかけることもできなかった。
なんで追いかけることができないんだ…。楼栗のことが好きなはずなのに…。
俺自身がダメな人間に思えてしょうがなかった。
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