ぷらっちなむ・パーフェクト
「あ、そうそう。あんた達ごめんね。今日一日、あれ空いてないのよ」

那美は川に浮かぶマリンジェットを親指で指し示す。

「えー、せっかく立てるようになったのになー」

「ごめんね。うちも今が稼ぎ時だから」

「じゃ、俺達ここで待ってるよ。ちょっとでも空いたら声かけてくれよ」

「わかったわ。それじゃ、ここよろしくね」

店番をする なんて一言も言ってないのだが、2人は那美の後姿を見送った。

腕を組んで向かい合い、沈黙する二人。しばらくすると二人は目を合わせ、お互いに頷き合う。

「俺達の目はごまかせないよー、那美ちゃん」

梅男はソファから立ち上がると、いそいそとカウンターの向こう側へと向かう。

そして、先ほど那美が放り投げた新聞とチラシの束を手に取る。

梅男がチラシを2,3枚めくったところで動きを止める。梅男の周りの空気が段々と尖っていく。その表情は、先ほどの那美と同じだ。

「あのやろー、、、」

梅男はチラシをぐしゃぐしゃに丸めると、勢い良く外房マリンを飛び出した。
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