ぷらっちなむ・パーフェクト
向こう岸で異変が起きたのは、待ちぼうけのお詫びにと那美がくれたソフトクリームを舐めている時だった。

桟橋で静かに垂れていたタカの釣竿が勢い良く撓った。

タカの周りに釣り部隊の面々が集まってくる。久々の当たりに向こう岸は俄かに慌しくなった。

「なんだ 魚いるんじゃねーか」

「さかなさかなさかなー」

融けかけたソフトクリームを舐めるのはやめない程度の関心を向こう岸に示す梅男と富田。

魚は中々水面から顔を出さない。代わりにタカの足が一歩、また一歩と前に出る。

タカが一歩足を前に出す毎に周りの人間達がタカの体を支えようと集まり、一塊になっていく。

「あれは新しい釣りのやり方か」

「何だか運動会の綱引きみたいだね」

梅男と富田は、大の男たちがひとかたまりに密着して釣竿を引き上げようとする様子を少し気持ち悪そうな顔をして見ている。
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