ぷらっちなむ・パーフェクト
ぎこちない動きで水を必死に掻く。

巨大魚はゆっくりと近づいてくる。だが、掻いても掻いても前に進まない。

奈津を射程内に捕らえた巨大魚は、先ほどと同じように一瞬沈み込む。

大好きな町の川で死ねれば本望さ。

なんて、思えるわけがない。奈津は全身を強張らせて目を閉じる。


その時。

ウェットスーツの首の部分に力を感じた。その力はものすごいパワーで奈津を岸を引っ張っていく。

奈津はわけもわからず後ろ向きに引っ張られ、それまで自分が浮かんでいたところに白い巨体が舞い上がるのを他人事のように見送っていた。

ドドドドドドド。

轟音と水飛沫と共に巨体が水面に吸い込まれていく。

その間も奈津はぐいぐい岸へ引き戻されていく。梅男達のいる外房マリン側とは反対の岸へ。

「はい大物、大物がかかりましたぁ」

桟橋まで引っ張られた奈津は大きな網を頭から被せられる。見上げると、タカをはじめとする釣り部隊の面々が立ち並んでいた。

「小物だ」

タカがそっぽを向いて言った。
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