ぷらっちなむ・パーフェクト
一番手は梅男。

スノーボードに限らず、このメンバーでいつも先陣を切るのはこの男。

カラオケも、ファミリーレストランの注文も、楽しい男女混合お食事会での自己紹介も。

だが、スタート地点に梅男の姿は無い。

「お姉さん、もうちょっと下がった方がいいかも」

紺がスタート位置に立っているミニスカートのキャンギャルにやさしく声をかける。

「あ、ごめんなさーい」

キャンギャルは愛想を振りまきながら、紺に言われたとおり一歩下がった。

そもそもなんのためにキャンギャルを配置しているのか、なんのために3月の終わりとは言え雪が地面を覆うこの季節にミニスカートなのかわからない。

梅男を除く4人はスタート地点で腕を組み、じっと前を見据えている。

まるで、この後に起こる一瞬の出来事を見逃すまいと待ち構えているように。

ふと、どこか遠くから獣か何かの雄叫びが聞こえてきた。耳を澄ますと、どうやら山の上の方から。

春の気配を敏感に感じ取り山へと戻ってきた鳥達が、これまた不穏な空気を敏感に感じ取りそれまで羽を休めていた木の枝から慌しく飛び立つ。

雄叫びは徐々に近づいてくる。
< 14 / 185 >

この作品をシェア

pagetop