ぷらっちなむ・パーフェクト
この時期になると、陽が出ればじゃんじゃんと雪は融けていく。

融けた雪は水となり、流れ出る水に浸された道路や駐車場は黒光りをして湯気を立ち昇らせる。

冬の終わり、春到来の光景だ。

ペンションから歩いて5分程のバス発着場。

毎年のように、満里とオーナーが見送りに来てくれる。

「忘れもんないか?」

「荷物よーし、おみやげよーし」

梅男の掛け声に、富田が指差し確認を始める。

奈津が置いてけぼりにされた年から、ネタというか一つの儀式のようになっている。

「あれ、梅男隊長、奈津がいません」

「富田隊員、それが奈津ではないか」

「あ、おみやげのメロンかと思ったであります」

「だっはっはー!!」

この二人は何かネタを見つけると、ウケなくなるまで徹底的に追求する。

実際ウケているのは当人だけなのだが。つまり、飽きるまでってこと。今回のターゲットは見舞い用のメロンこと、奈津。

「はいはい、奈津よーし」

紺が奈津の頭を手のひらでぐりぐりしながら言った。傷に触った。いててて。

発着場に東京行きのバスがやってきた。5人は荷物を積み、バスに乗り込んだ。
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