ぷらっちなむ・パーフェクト
「人間がどんなにがんばったって、海を自分の物にすることはできないだもん」

浜辺で遊ぶ小さな子供と両親を見て、奈津は小さい頃に信と母と家族3人でこの場所に遊びに来た時の事を思い出す。

鮮明に覚えているのは、陽が当たらないよう日陰に寄せておいた昼食用の弁当がカラスに持っていかれたことだ。

波打ち際で奈津と一緒に波と戯れていた母がカラスに気付き、慌ててお弁当に駆け寄ろうとした。が、いかんせん距離があり過ぎた。

カラスはから揚げやウィンナーなどおかずの入った弁当箱を選び出し、悠々と上空へ舞い上がっていった。最近のカラスは美味しいものを知っている。

食べ物を奪われたと言うのに、信と母は楽しそうに笑っていた。それがその時とても不思議だったが、楽しそうに笑う二人につられて自分も笑った。

そして、大人になったら二人が何で笑ってるのかわかるようになるのかな、などと子供心に考えたのを覚えている。

おかずのないおにぎりだけのランチ。それでも、十二分においしいランチだった。
< 71 / 185 >

この作品をシェア

pagetop