ぷらっちなむ・パーフェクト
「そろそろ始まる時間だね」

満里は時計を見ながら言う。時刻は午前11時。

満里の問いに答える代わりに、にっこりと微笑む明。満里の父親であり、スキー場の麓にあるペンションのオーナーだ。

慌しい午前の仕事を終えた二人は、ペンションの喫茶室でカウンターを挟んで向き合い、ひと時の休息をとっていた。

「今年は勝つかなぁ」

頬杖をつき、満里は焦点の定まらない目をしながら宙を見る。

明は慣れた手つきでコーヒーサイフォンの手入れをしている。満里の問いには答えず、今度は表情も変わらない。

「勝つわけないっか」

満里は明の後ろに飾ってある写真に目を移す。

写真には、5人の男たちが笑顔で肩を組んで写っている。写真は額にいれられ、黒のマジックでコメントが書かれている。汚い字。

「2008俺達の冬」

奈津を中心として右側に梅男と富田、左側に晴と紺。雪が降っていたのか、頭や肩に雪がうっすらと積もっている。

「ほんと、子供みたい」

5人の頬は寒さで赤く染まり、その中の2人、梅男と富田の鼻からは鼻水がつららのように垂れていた。
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