ぷらっちなむ・パーフェクト
結局その後、梅男が水面に立つことはなかった。その後に富田、紺、晴と続いたが、結果は似たようなものだった。

「奈津、準備はいい?」例のごとく八の字航行をしながら那美が聞いた。

「う、うん」奈津はあまり準備のできていなそうな返事を返す。

低回転のエンジン音がのんびりと唸る。奈津が進みはじめる。水の抵抗が重さとなって手に伝わってくる。

体がゆっくりと水面から浮き上がる。奈津は体で感じたまま板を操った。なんだか、板が「こっちへ行きたい」と言っている気がした。

岸で見守る梅男達が、飛び上がりながら叫んだ。

「立ったー!奈津が立ったー!」

奈津は初めて自転車に乗った子供のような表情で、その後5分ほど水面を弾むように滑走した。
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