ぷらっちなむ・パーフェクト
釣具屋はタカの家族が、酒屋は将一の家族が営む個人経営の店だ。

店はもう営業時間を終えているから、店の前に設置されている自動販売機に千円札を入れる。

赤くランプの点灯したボタンを押そうとすると、釣具店のシャッターがいきなり開いた。

奈津は　ヒィ　と情けない声をあげてしまう。

「タ、タカ」

息を飲み込み、人差し指をボタンの前で止めたままやっとのこと声を搾り出すように名前を呼ぶ。

が、奈津の呼びかけに応えず、タカは自転車に跨った。

「あ、あれ？」

次の言葉が頭に浮かんでくる間もなく、タカは奈津とは反対方向へと自転車をこいで行ってしまった。

あ、あれ？あれれ？

自転車をこぐタカの後姿を茫然と見送っていると、今度は酒屋の２階の窓が　ガラッ　と開いた。

またもや奈津は　ヒィ　と情けない声をあげる。そして自動販売機のボタンを押してしまう。

勢いあまって押してしまったボタンは信から託ったものとは違う銘柄のビール。

見上げると、これまたタカと同様中学から行動を共にするようになった将一の顔があった。
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表紙・目次

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